Masaさん
健康保険と年金を安くしたくてネットで調べてたんですが、マイクロ法人っていうのがいいって色々なところで出てきたんですが、本当に大丈夫ですか?何かデメリットあるんじゃないですか?教えてください!!

Mihoさん
マイクロ法人が健康保険や年金の支払額を抑えるために有効な方法であることは確かです。
マイクロ法人スキームは割と高度な計算と管理体制が必要になってきます。
他にも気をつけることや、負担になるデメリットなどもたくさんあるので今日は、この辺について話していきますね。

マイクロ法人とは?

マイクロ法人とは、売上や利益の数値という事業の拡大を目的とせず、一定(概ね最低限)の売り上げ・経費を維持して運営する法人のことを言います。

よく勘違いする人がいますが、法律的にマイクロ法人という言葉・分類は存在しません

報酬や給料・業績の増大を目的に売り上げや利益の拡大をして成長していく(通常)法人に対して
上記のように一定水準を維持して最低限の給与・報酬をとる運用をしている法人のことをマイクロ法人呼んでいます。(必要最小限の運営をすることから「マイクロ」という言葉が当てられるようになりました)

法律的に分類がないので、税金や控除・税務作業・労務管理などあらゆる面で通常法人と同じ管理体制が求められます。

マイクロ法人の最大のメリットは健康保険&年金

個人事業主の場合では前年の所得額に対する当年の住民税の課税額に対して国民健康保険料が決定します。
(計算方法は、住所地の市区町村によって異なります。)
それに加えて国民年金を毎月固定額を納付することになります。(2023年度の場合で16520円)
この国民健康保険料・国民年金の負担がとても大きいのです。

それに対して社会保険の保険料の金額は、役員報酬(以下:給与)の金額に対して決定するため、報酬が少なければ少ないほど社会保険料は安くなります。結果として社会保険料の節約(軽減)することが可能になります。

給与が少ないと生活に影響が出ますが、給与で足りない分を個人事業の収入で補うのが前提となります。

再掲となりますが、社会保険加入者の保険料は給与の金額で保険料が決まり、個人事業で得た収入については算定の対象になりません。
個人事業での収入がどれだけ大きくても、給与が少なければ社会保険料は安く抑えることができるのです。

加えて個人事業主の場合は年金の階層が国民年金だけの1階層に対して社会保険の場合は国民年金に加えて厚生年金が加わり2階層となるので、年金受給額は個人事業主よりも多くなります。

ここには注意!!

厚生年金部分は、給与額(年金保険料額)に比例して受給額が増えます。通常の会社員に比べて年金保険料の支払額が少なくなる傾向になるので、通常の会社員よりも年金支給額は少なくなります。

他にもメリットはありますが、さらに高度な知識を要求されるので今回は割愛します。

前提 持っている事業が2つ以上に分割できる必要がある。

年金・健康保険のところでも触れましたが、マイクロ法人での(最低限の)売上と個人事業での売上があって初めて成立します。
したがって、法人につける売り上げと、個人につける売り上げの2種類の売上が必要になります。

それぞれの売り上げを一度決めた後に法人・個人間で入れ替えることは税務否認の対象になる原因となるので、決めた後については、原則入れ替えることはできないものとして考え、どの事業を法人に移管して、どの事業を個人に残すのかを決める必要があります。
法人に一定額・最低限の売り上げの見込みがあり、今後も成長・衰退させることがなく、維持することが困難でないものを選択するのがベストです。

では、デメリットは??

①法人の設立に費用が掛かります。

会社の設立には法務局で会社設立の届出をする必要があります。
手続き自体はそこまで難しいものではないのですが、定款の作成など専門的な知識が必要なものが多くあります。
最近では、オンラインで必要事項を入力すると自動で定款を作成してくれるサービスもありますが書類の作成だけでも一定の費用がかかるのが一般的です。

その費用とは別に、法務局に届出をする際に印紙を貼って届出を行います。その印紙にも一定の費用がかかります。

細かいことですが、会社登記をする際に、会社の実印を同時に登録するので、会社名義の実印を作る必要があります。

手続きそのものが自分でやりたくない(面倒臭い)という場合には司法書士さんを探して代行してもらう方法があります。

②本店所在地の維持に費用がかかります。

法人設立の際に本店所在地を設置する必要があります。
法律的には会社登記をできる権利を持っている場所であればどこであっても設置することが可能です。
個人で賃貸で住居や店舗を確保している場合には、その住居・店舗が賃貸契約で登記利用不可になっているものがほとんどです、その場合は、会社登記が可能な物件を探して賃貸契約をして会社登記ができる権利を確保する必要があります。通常は年単位や月単位などで賃料を払う形になりますので、毎月のランニングコストとして費用が発生します。

持ち家の場合は会社登記が可能なので、そのまま本店を設置することが可能です。しかし、法人の場合は本店所在地は一般の方が簡単に閲覧できるようになっています。(変更した場合も履歴が残ります。)そのため、自宅を本店にすると自宅の住所が公開されているのと同じ状態になりますので、リスク管理などが必要になってきます。

③法人での税務作業・労務作業と個人での税務作業が発生します。

個人事業の時と同じように、法人の場合も1年周期で確定申告と納税が発生します。
税務知識がない場合は税理士と顧問契約することになると思いますので、毎月の顧問料が発生します。
マイクロ法人でも日商簿記2級程度の会計知識が必要であると認識しておくと間違いがないと思います。

税務作業を自分でやる場合についても、日々の帳簿の作成などによる時間的コストが発生します。

これを、法人と個人事業の両方でやる必要があるので、委託するにしても自分でやるにしても毎月のランニングコストとして発生することになります。

加えて法人の場合は、法人で自分という役員を雇うという概念になるため、法人では労務の知識や実務が発生することになります。こちらの場合も税務作業と同様で自分でやれない場合には、社会保険労務士にお願いすることになります。

個人と法人で売り上げを分割てしているので、通常は払い出しの税金(所得税・住民税・法人税など)は少なくなるのが一般的ですが、個人と法人で税率が違うので払い出しが必ず少なくなるとは限りません。

基本的にデメリットになる部分は、継続して行う管理的なものが多く一度で終わらないコストが大半を占めます。
社会保険料の軽減というメリットが、これらのデメリットに優るかが導入の検討の段階になります。

ポイントは、自分への給与を抑えつつも会社に利益が残らない運営をすること

法人の実効税率(所得税部分)は概ね23%です。個人が所得税を23%以上徴収されるラインは課税所得で900万円以上からになります。
法人に利益が残れば残るほど個人の所得が減るので、結果的に全体での税額は上がってしまいます。

いかに法人に利益が残らないように払い出してしまうかがポイントになります。